2025年6月、一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会では、元日本代表バレーボール選手・井上愛里沙さんと代表理事・鈴木颯人による特別対談イベントを開催しました。
2017年から約6年間にわたり、メンタルコーチとして井上さんをサポートしてきた鈴木との対話は、現役時代の葛藤やオリンピックを目指した過程、そして引退後に見えてきた“本当の自分”についての深い気づきにあふれていました。

▶️「アスリートとして、自分のことが好きですか?」
この問いから始まった初対面のセッション。
当時、神戸から東京まで足を運び、初めてのメンタルコーチングを受けた井上さんにとって、その一言が大きな転機になりました。
「バレーボールが本当に好きかどうか分からなかった。だけど、自分自身のことを好きになりたい——そう思ったんです。」
対談では、自己肯定感をどう育ててきたか、否定的な言葉をどう手放していったかといった心の変化がリアルに語られました。
「今日できなかったこと」を「次はどうするか」に書き換えるノートの使い方や、自信を失いそうな時期に支えになった鈴木とのやり取りが紹介されました。

▶️オリンピック予選、怪我、そして「やりきる」覚悟
2023年のパリ五輪予選。
連戦の疲労の中、井上さんは足の甲の怪我を抱えながらもスタメン出場を続けました。
「痛みがいつ来るか分からない中で、毎回のジャンプに全神経を集中させていた。」
それでも、チームのため、夢のために全力でプレーし続けた姿には、会場の多くの方が心を打たれました。
また、当落線上にいた代表メンバー選出の際には、深夜の電話相談で鈴木と話したことが、不安の中の“光”になったとも振り返りました。

▶️メンタルコーチがいたからこそ届いた景色
井上さんのキャリアは華やかさに満ちているようで、その裏側には数え切れないほどの「心の戦い」がありました。
MVP獲得、最多得点記録、フランスリーグへの移籍など、どれも決して順風満帆な道のりではなく、むしろ葛藤と迷いの連続だったと言います。
「苦しい時でも、自分を否定しないこと。比べないこと。そして、目の前の“今できること”に集中すること。」
そのすべては、鈴木との日々の対話とメンタルトレーニングから得た学びでした。
▶️メンタルコーチは“結果”よりも“寄り添い”
井上さんは、対談の終盤こう語ってくれました。
「隼人さん(鈴木)の存在は、試合中でも、どんな状況でも“話せる場所”でした。心の安全基地があったから、戦えたんだと思います。」
スポーツの世界では、どうしても「結果」に注目が集まりがちです。
しかし私たちスポーツメンタルコーチは、その“見えない部分”を支える専門家です。
アスリートの人生に深く関わり、ときには競技を越えて人生そのものに伴走する。
今回の対談は、まさにその原点を感じさせてくれる時間でした。
▶️最後に
この対談を通じて、スポーツメンタルコーチという存在の価値を改めて実感していただけたのではないでしょうか。
「One athlete, One mental coach 〜1人のアスリートに、1人のメンタルコーチを〜」
協会として、これからもこのビジョンを胸に、一人ひとりのアスリートと真摯に向き合い、メンタルコーチの社会的な役割と可能性を広げてまいります。
引き続きご支援、ご注目のほどよろしくお願いいたします。
