スポーツメンタルコーチ入門講座を終えて:これから目指すあなたへ

目次

はじめに:スポーツメンタルコーチを目指すあなたへ

スポーツメンタルコーチという言葉を最近よく耳にするようになりました。

アスリートの活躍の裏側に、メンタルのサポートを専門に行うプロフェッショナルが存在する。この事実に気づいた方の中には、「自分も誰かを支える存在になりたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。

私たち一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会では、「スポーツメンタルコーチング」を体系的に学べる入門講座を定期的に開催しています。累計113回を超える開催実績があり、これまでに多くの指導者、保護者、トレーナー、そして未来のメンタルコーチたちが学びの扉を開いてきました。

この入門講座では、協会が独自に構築したスポーツメンタルコーチング理論の基礎をお伝えしています。

※「スポーツメンタルコーチ」は当協会の商標登録です。

講座の最後には、毎回参加者から多くの質問が寄せられます。時には話が盛り上がり、終了予定時刻を30分以上オーバーしてしまうこともあります。昨日の講座でも、ある受講者の方からこんな質問がありました。

「実際に活躍しているスポーツメンタルコーチって、どんな人ですか?」

とても本質的で、講師である私自身も考えさせられる質問でした。

スポーツメンタルコーチを目指すうえで、技術や知識ももちろん重要ですが、長く信頼されるコーチには“ある共通点”があることに改めて気づかされました。

それは「謙虚さ」です。

この後の章では、入門講座での気づきとともに、スポーツメンタルコーチとして大切にしたい姿勢や考え方をお伝えしていきます。これからこの道を志す方が、一歩踏み出すきっかけになりますように。

第1章:入門講座で見えた、活躍するスポーツメンタルコーチに共通するもの

スポーツメンタルコーチを目指す方の多くは、「どうすれば信頼されるコーチになれるのか?」という疑問を持っています。

入門講座の最後に受けた質問「どんなスポーツメンタルコーチが活躍していますか?」この問いには、講師として私自身も毎回初心に立ち返る思いで向き合います。

そして、これまで多くの現場で活躍してきたメンタルコーチたちを見てきて、一つ確実に言えることがあります。

それが、「謙虚さ」を持ち続けているということです。

謙虚さは、すべての学びの起点になる

スポーツメンタルコーチという仕事は「先生」と呼ばれる立場になることが多く、気づかぬうちに「自分が正しい」と思い込んでしまうリスクを抱えています。

しかし、どんなに経験を積んだとしても、スポーツの現場には常に新しい発見があります。競技特性の違い、選手の個性、時代背景、価値観の変化…。それらに対応するには、常に学び続ける姿勢が必要です。

入門講座では、スポーツメンタルコーチとして活動するうえでの基本的なスキルや考え方だけでなく、「選手から学ぶ姿勢」の大切さもお伝えしています。

「謙虚さ」があるからこそ、信頼関係が築ける

スポーツメンタルコーチングの核は、選手との信頼関係です。その信頼は、「この人は自分のことを理解しようとしてくれている」と感じてもらえるかどうかにかかっています。

つまり、指導者としての強さだけでなく、耳を傾ける柔らかさが求められるのです。

講座でも、「目標設定がうまくできない選手」「言葉にしづらい不安を抱えた選手」と向き合う中で、傾聴や共感の重要性を学びます。どんな時も謙虚に相手と向き合える姿勢が、結果的に選手のパフォーマンス向上にもつながっていくのです。

第2章:SNS時代に問われる 在り方 としてのコーチ像

現代のスポーツメンタルコーチに求められる力は、単なる知識や技術だけではありません。情報発信のあり方や、自分の「見せ方」も含めた“在り方”が問われる時代です。

特に、SNSでの発信はその象徴です。選手とのツーショット写真や、現場の活動報告など、意図せずとも「自分をどう見せたいか」がにじみ出てしまうのがSNSの世界。だからこそ、そこにこそコーチとしての「軸」が現れます。

自分のための発信か?誰かのための発信か?

SNSで発信すること自体は悪いことではありません。むしろ、スポーツメンタルコーチとしての活動を知ってもらい、誰かの勇気や気づきにつながるのなら素晴らしいことです。

しかしその発信が、自己アピールや「すごいと思われたい」という動機から来ている場合、どこかでズレが生じます。

本当に選手のためを思い、現場に寄り添っているコーチほど、投稿の端々から「謙虚さ」や「誠実さ」が伝わってきます。つまり、発信の内容ではなく、“在り方”が伝わってしまうということです。

謙虚さは、見えない信頼を積み上げる

スポーツメンタルコーチという職業は、選手の心の奥深くに触れる仕事です。だからこそ、何よりも「信頼」が不可欠。その信頼は、普段のふるまいや発信から、少しずつ積み上げられていきます。

「私は完璧ではない。だからこそ、もっと学びたい。」

そんな姿勢が、選手や保護者、指導者に伝わっていくと、コーチとしての信頼も自然と高まっていきます。

第3章:スポーツメンタルコーチの学びは、答え探しではなく問い続ける力

スポーツメンタルコーチを目指すうえで、つい「正解」や「テクニック」に頼りたくなる気持ちはよくわかります。

どんな言葉をかければいいのか?
どんなワークをやらせれば効果があるのか?
どんなフレームを使えば選手がやる気になるのか?

もちろん、効果的な技法や言葉があるのも事実です。しかし、メンタルコーチとして本当に求められるのは、「問い続ける姿勢」です。

同じ選手はひとりとして存在しない

ある競技で通用したアプローチが、他の競技ではまったく意味をなさないことがあります。A選手には響いた言葉が、B選手には逆効果になることもあります。

つまり、コーチとして「これが正解だ」と思い込んでしまうことは、選手一人ひとりの違いや背景を見えなくしてしまうリスクがあるのです。

だからこそ、スポーツメンタルコーチは常に問い続ける存在であるべきです。

「今、この選手にとって必要なものは何か?」
「この言葉は、今このタイミングで本当に届くのか?」
「私は、この選手にどんな支援ができるのか?」

問いを持ち続けることで、私たちはコーチとして成長し続けることができます。

知識より姿勢が信頼を生む

知識を詰め込むことよりも、「わからないことをわからないまま放置しない」姿勢や、「答えを教えるのではなく一緒に考える」姿勢こそが、選手からの信頼を生みます。

スポーツメンタルコーチとは、答えを与える人ではなく、選手自身が「自分なりの答え」を見つけられるように支援する人。そのためには、コーチ自身が問いを大切にする人でなければなりません。

第4章:だからこそ、学び続けるコミュニティが必要になる

スポーツメンタルコーチという仕事は、決してひとりで完結できるものではありません。

なぜなら、私たちが相手にするのは「人」であり、「競技」や「状況」も毎回異なるからです。唯一の正解がない世界において、常に“問い続ける姿勢”を持ち続けるには、自分の視点だけでは限界があります。

経験を持ち寄り、視野を広げる場

同じようにアスリートを支援している仲間たちと、悩みや経験、実践での工夫を語り合える場。それがスポーツメンタルコーチ協会が大切にしている「学び合いのコミュニティ」です。

ある人のつまずきが、他の誰かのヒントになる。
ある人の小さな気づきが、全体の学びを深める。

こうした循環こそが、スポーツメンタルコーチとしての「引き出し」を増やし、現場でより柔軟な支援ができる土台をつくってくれるのです。

「ひとりの選手に、ひとりのメンタルコーチを」実現するために

協会が掲げるビジョン「One athlete, One mental coach」は、一人ひとりの選手に合ったメンタルサポートが受けられる世の中を目指したものです。

それを実現するには、コーチ一人ひとりが孤立することなく、専門性と人間力を磨き続けられる環境が必要不可欠です。

講座で学び終えて終わりではなく、そこからが本当のスタート。ともに学び、悩み、挑戦する仲間がいることは、コーチとして歩み続けるうえで大きな支えになります。

第5章:謙虚さが、選手との信頼を育てる

「どんなスポーツメンタルコーチが活躍していると思いますか?」

入門講座の最後にこんな質問を受けたことがあります。即答できず、しばらく考えて私の口から出た言葉は「謙虚さ」でした。

スポーツメンタルコーチという仕事は、選手の内面に深く関わる、非常に繊細な支援です。選手の努力や悩み、迷いや葛藤を真正面から受け止めるには、自分の経験や価値観を一方的に押しつけるのではなく、相手から学び取ろうとする姿勢が欠かせません。

「先生業」こそ、謙虚さを忘れやすい

コーチングを続けていると、いつの間にか「教える側」としての立場に慣れてしまい、自分の言葉が正しいと錯覚してしまう瞬間が訪れます。

しかし、アスリートの方が実際の現場でははるかに多くの葛藤を抱え、挑戦し、成長しています。むしろ私たちコーチのほうが、その生き方から学ぶことばかりです。

「先生の先生」がいなくなる職業だからこそ、自ら謙虚さを持ち続け、日々問い続ける姿勢がなければ、いつの間にか独りよがりになってしまいます。

謙虚さは、信頼に変わる

SNSやメディアを通じて成果をアピールすることももちろん大切ですが、選手との関係性のなかで本当に信頼を築くには、内側にある「謙虚な在り方」が滲み出るものです。

相手の言葉に真摯に耳を傾けること。
答えを教えるのではなく、一緒に考えること。
うまくいった時ほど、自分の支援を疑ってみること。

こうした積み重ねが、やがて深い信頼となり、選手の成長を加速させていくのだと、私は信じています。

おわりに:スポーツメンタルコーチを目指すあなたへ

スポーツメンタルコーチ入門講座を終えるたびに、私たちがこの活動を通じて届けたい本質とは何かを、改めて見つめ直す機会をいただいています。

この仕事の本質は、「教えること」ではなく、「寄り添い、引き出すこと」です。そしてその根底にあるのが「謙虚さ」です。謙虚であるとは、自信がないことではありません。むしろ、自分の限界を知り、相手から学ぶ姿勢を持ち続ける強さでもあります。

私たち一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会は、「One athlete, One mental coach」という理念のもと、全国で活躍するアスリートたちに寄り添い、その可能性を引き出すコーチを育成しています。

スポーツメンタルコーチとしての第一歩は、「自分がどんな在り方でありたいか」に気づくことから始まります。

もしあなたが、誰かのために真剣に寄り添いたいという気持ちをお持ちなら、私たちの扉を叩いてみてください。

あなたのその想いが、きっと誰かの人生を変える力になります。

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