嫌われたくなくて言いたいことが言えないアスリートへ

スポーツメンタルコーチ、石井 大樹のブログ
嫌われたくなくて言いたいことが言えないアスリートへ

言いたいことが言えないと競技以外で消耗する

「これを言って雰囲気が悪くなったらどうしよう…」

「相手に伝えたことで嫌われたらどうしよう…」

そんな思いを抱えた経験はありませんか?

私自身も、現役時代に一番苦しんだことは「人間関係」でした。

「自分が決めたことに文句を言われたら…」

そんな風にとにかく周りの目ばかりを気にしていました。

そんな過去を持つ私も、今ではスポーツメンタルコーチとして、

当時の経験などを生かし、悩みを持つアスリートをサポートさせて頂いています。

様々なアスリートと接する中で、

「言いたいことが言えない…」

「これを言うことで相手に嫌われたらどうしよう…」

そういった悩みを持つ選手を直接見てきました。

それはつまり、改めて「人間関係で悩み、思ったことを言えないアスリート 」は過去の自分だけじゃないと気付くことにもなりました。

実際に私が以前サポートしていた、ある競技で海外で活動する選手がいます。

その選手と出会った時は、いずれ海外でプロとして活躍することを目標に日本を拠点に日々努力を積み重ねていましたが、周りのチームメイトとコミュニケーションが噛み合わないことが見られる場面がありました。

練習中も、声を荒げ、チームメイトに強く発言をすることも時としてありました。

そういった出来事がさらに周りのチームメイトとのコミュニケーションに溝を作ることに…。

そんな時にその選手と出会いました。

「自分が思ったことが上手く伝わらない…」

なかなか結果に繋がらないこともあり、その選手のストレスレベルはかなり高い状態でした。

「練習に全く集中できないんです…」

この選手は競技以外の部分でかなり消耗してしまっていました。

本当に集中したいことにエネルギーを使うことが厳しくなっていたのです。

そして思いを打ち明けてくれた選手の話をさらに深く掘り下げていき、ぽろっと出てきた言葉が、

「誰にも嫌われたくない…」

それがその選手の心の声でした。

誰にも嫌われたくないからこそ、思ったことが言えない。

思ったことが言えないから、我慢し続けるしかない。

我慢し続ければ、ストレスが溜まり続ける。

そんな悪循環にハマってしまっていることにメンタルコーチングを通して気付いてもらいました。

嫌われたくないと思っているにも関わらず、現実では周りのチームメイトとのコミュニケーションの溝ができているという矛盾が生じている。

このように、人間関係の悩みが競技パフォーマンスに与える影響はかなり大きいものです。

だからこそ、人間関係で悩むアスリートの皆さんには、

「人間関係で悩むことはアスリートとして甘い」

「競技以外のことで競技に支障をきたすのはアスリート失格」

そんな風に思わないで欲しいのです。

“競技以外の悩みも、競技に直結している”

このように考えて欲しいですし、これがリアルだと思います。

皆さん自身も、身を以て経験してきているはずです。

思ったことが言えない、人間関係での悩みによって競技パフォーマンスは明らかに変わってしまうのです。

目次

人間関係が原因で好きだったはずの競技を嫌いになった副キャプテン時代

かくいう私も、人間関係によって苦しんだ経験があります。

大学アメフト4年目、

私はチームの副キャプテンとしてチームの運営・監督コーチ陣とのパイプ役も行なっていました。

最終学年、勝って有終の美を飾ろうと意気込んでいました。

2年前、数十年ぶりに2部リーグに降格してしまったこともあり、

何としても1部リーグへ昇格を果たしたいと思っていました。

しかし、新チームスタート後に待っていたのはまさかの悩みでした。

“思ったことが言えない毎日”

“誰の言うことは聞くが誰の言うことは無視するなどの派閥”

まさか競技以外のことで、こんなに頭を悩ませるとは思っていませんでした。

それはスキル、フィジカル面の話ではなく、

シンプルに競技に向き合うメンタル面の問題でした。

そんなチームに対して監督コーチ陣からも指摘をもらいます。

「お前たちがしっかりしないから下もそうなる」

後輩たちと監督コーチ陣の間に挟まれ、

ただ後輩たちの不平不満と監督コーチ陣からの指摘の受け皿となっていた私は、

思ったことを言えず、一方的に殴られ続けるサンドバッグのような状態でした。

それでも、やっぱり1部昇格を果たしたい、勝ちたいという気持ちがあったからこそ、

我慢することができたし、誰よりも練習に真摯に向き合っていた自負があります。

しかしある時、ついに我慢していたツケが回ってくることに。

“チームメイトに無視される日々”

“誰も自分の言葉に耳を傾けない”

その時は唐突に訪れました。

何が起きたか理解ができませんでした。

「どうしてチームのためにやっているのにこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ」

心からの悲しみと怒りが込み上げてきました。

そこから好きでやっていたはずのアメリカンフットボールを嫌いになるまではあっという間でした。

「もうアメフトをやめてしまおう」

「楽しさを感じられない」

そんな風に思うようになりました。

しかし今思えば、とにかくチームから逃げ出したかったんだと思います。

「遠慮をせず、配慮を忘れるな」という言葉

とにかく逃げたかった私でしたが、なぜか逃げ出す自分を許せませんでした。

向き合うことも、逃げることもできず、中途半端なまま、未だ周りの目ばかり気にして

言いたいことを言えていませんでした。

そんな時、学生時代に一番お世話になり、

私が殻を破るキッカケとなったコーチから声をかけられます。

「最近、全然お前らしくないぞ、思い切ってやれよ」

そこでコーチに言われ、初めて気付きます。

周りの目ばかりを気にしていた自分は、フィールドでのプレーにも中途半端さが表れていました。

当時、プレーヤーとしての私の強みは「思いっ切りの良さ」でした。

判断力によるプレースピードの速さで相手の攻撃を止めることが長所でした。

それが全くと言っていいほど、影を潜めていました。

「周りに遠慮してるんだろ?遠慮しても誰も得しないぞ」

「遠慮と配慮は全然違うものだぞ」

そう言われて、ハッとしました。

今までの私は、とにかく周りの目ばかりを気にして遠慮していました。

思ったことを言わず、心の中に押し込み、我慢していました。

しかし、それは自分にもチームにも何も良いことがないことに気付いたんです。

自分が我慢した分、その負の感情の受け皿になるのは周りの人間。

伝えるべき事実を伝えないことはチームの成長にも繋がりません。

一方で配慮は全くできていませんでした。

“チームに必要なことをより分かりやすく伝える”

“チームのために勇気を持って言いにくいことを噛み砕いて伝える”

そういったことからはとにかく逃げてきました。

今振り返ると、

「思ったことを言って反感を買ったらどうしよう…」

「誰かに賛同することで、他の誰かから否定されたらどうしよう…」

誰かに嫌われることを恐れていたんです。

だからこそ、決断しなければならない状況でも決められず、中途半端なままでした。

それはフィールドでのプレーでも同じで、決断する勇気を持てなくなっていたんです。

今なら笑ってしまう話ですが、

誰かに嫌われたくないと思っているくせに、

チームメイトから無視されるという矛盾がここに生じていることにもコーチの言葉で気付きました。

傷付きたくなくて、問題を先送りにしていたんだなと思い知ったのです。

人は転んだら傷付きます。

確かに、転ばないようにすれば傷付かずに済むかもしれません。

しかし、転んだ分だけ起き上がる力が身につき、同じように転ぶことは減っていきます。

転ばないようにすることは、起き上がる力を手にいれるチャンスを捨てているのと同じなのです。

このコーチからの言葉で、

今まで自分が傷付くことを恐れて、本当に大切なことから逃げていたことに気付くことができました。

誰からも嫌われないのは誰からも好かれないのと同じ

転ばなければ痛くはない、しかし起き上がる力は身につかない。

一方で転んだら傷付く、しかしその度に起き上がる力を身につけていく。

どちらの自分を選ぶことが、より成長に繋がるでしょうか?

そもそも、「絶対に転ばない人」はいるのでしょうか?

この問いは、人間関係にも当てはめることができます。

「地球上で誰にも嫌われていない人」はいるでしょうか?

人は合う人、合わない人がいます。

大なり小なり、思う部分はあって、それが耐えられるかどうかの問題です。

誰からも嫌われないなんてことはあり得ないのです。

もし、そんな人がいるとすれば、それは「誰からも好かれていない」のと同じです。

大切なのは、「伝え方」です。

相手を思っているからこそ、伝えるべきことが必ずあるはずです。

それを伝えないのは、相手の成長を奪っていることと同じです。

そのために「相手に届く伝え方」が大切なんです。

・どうすれば相手を不快にさせないか?

・どうすれば相手に分かりやすく届くか?

そういった工夫をすることが、人間関係を好転させることにつながります。

遠慮することを減らし、「配慮」を意識するようになった私は、

過去チームメイトに無視されるような関係性だったのが、引退試合を終えた頃には

自分の引退を後輩たちが泣いて惜しんでくれるまでに関係が修復していました。

引退してからも1年ほどは、OBコーチとして練習に呼ばれるほど関係が良好になりました。

辛かった出来事も、今振り返ると、その経験があったからこそ、

自分は成長できたなと感じることができます。

しかしあの時、

「もっと早く自分を客観的に見てくれる存在がいてくれたら…」

「決断する勇気に気付きを与えてくれる人がいたら…」

自分の最終学年の結果はもっと違うものになっていたかもしれない…

そんな風に今でも思います。

あなたを応援し、好きでいてくれる人は必ずいる

もし、皆さんが「誰かに嫌われるのが怖い…」と感じるのなら、

「嫌われる恐怖」よりも、

「自分を好きでいてくれる、応援してくれる人」に目を向けて欲しいと思います。

プロ野球元楽天イーグルス監督の野村克也さんの言葉でこんなものがあります。

「上手くいってる時は周りに人がたくさん集まる、

だが一番大切なのは、どん底の時、誰がそばにいてくれたかや」

確かに嫌われることは怖いことです。

しかし、だからと言って地球上全ての人があなたを嫌っているわけではありません。

同じくらい、もしくはそれ以上にあなたを応援し、好きでいてくれる人はいるはず。

そんな人たちを大切にするためにも、

嫌われる恐怖に目を奪われてしまうのではなく、

「応援し、好きでいてくれる人」を思い出してみて下さい。

辛い時、苦しい時に、

「応援し好きでいてくれる人たち」を思い浮かべることができたら、どんな素敵な変化があるでしょうか?

自分の内側と1人で向き合うのは、本当に勇気が必要です。

だからこそ、

「今より少しでも成長したい!」

「上手くなりたい!」

「もっと競技に集中したい!」

そんなアスリートに寄り添い、アスリートが求めるビジョンに向かい一緒に走る。

そういう存在でありたいと思っていますし、

それを信念として、今も選手のサポートに携わっています。

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