スポーツメンタルコーチ、杉村康之のブログ
選手の心の内を知ろう

チームスポーツを指導する方々にとっては、それぞれ目標とするチーム像があり、そのチーム像に向けて日々努力されていることだと思います。

 そして、その現場で奮闘されているチーム関係者の方々からは、「チームとしてまとまりがない」「チームが本番に弱い」「チームのモチベーションが低い」といった、チームならではの悩みや葛藤をうかがうことが多々あります。 チームだけに、構成する人間はそれぞれ個性があり、考え方も異なり、まとまりを得ず、組織として機能しないリスクも当然抱えています。

 勿論「良いチーム」に唯一無二の正解はありませんが、チーム作りにとって大事なことをここでは考えていきたいと思います。

 選手と指導者間のコミュニケーション

チーム=組織とすると、その構成員であるメンバー、指導者、スタッフ間の「コミュニケーション」が人体で言うところの「血流」に相当します。この血流がうまく回れば健康は維持され、滞ると病気になります。

 このチーム内のコミュニケーションのうち、大きくチーム力に影響するのは「選手と指導者間」「選手間」の2つです。

 今回はこのうち、まず「選手と指導者間」のコミュニケーションについて考えてみたいと思います。指導者と選手との関係性はそのチームのあり方自体を大きく左右します。

コミュニケーションで大事なのは相手のことを「知ろう」とすることです。勿論、指導者の方であれば選手の情報は詳しく把握されていると思いますが、大事なのは選手が局面局面すなわち「練習」「試合」そして「普段」どう考えているかを「知る」ことです。

本音を知る

を「選手の本音」について2020年度高校ラグビーで日本一となった桐蔭学園高校の藤原秀之監督が話しているエピソードを紹介します。それは、以前、神奈川県大会決勝で負け、10年連続全国大会出場が途切れた後、一週間後にミーティングで徹底的に選手の話を聞く取組みをしたそうです。そこでは、中心選手が「普段できることができないことにあせり、頭が真っ白になってしまった」という意外な心理状態を語ったそうです。そこから、「聞かせる」指導から「聞く」指導にシフトし、選手の本音にこだわって今の常勝状態を築いたようです。

 選手にとって、場面毎にこころの中に本音があります。そしてその本音こそが、本人やチームの目指す方向に必要なポイントを明らかにします。

 「選手」は本音を話せていると思いますか。自ら「話せている。十分に聞いているよ」と思う指導者の方ほど、第三者に「自分に対して選手は本音を話せていると思うか」改めて聞いてみてください(本音を話してくれる第三者にですが)

 話せる関係性

それでは、あなたはどんな人に自分の「本音」を話しますか。話した際に「否定的に言われる」と思った相手に、本音を話しますか。人は実際に「否定された」体験等により、「否定されるだろうな」と思うと本音を気軽に話さなくなります。例え言葉づかいがソフトでも否定は否定です。

 そして、そのような思いが続くと選手は「失敗→否定される」ということが頭に浮かび、思い切ったチャレンジに、足がすくむようになってしますのです。

 一旦、ご自身の主張は置いておいて、選手の主張は受容する気持ちが大事だと思います。本人が言葉としてまとまっていないときは、冷静に問いかけてください。「問いかけ」の答えを探すことによって本人の気づきも促されます。

 早稲田大学ア式蹴球部(サッカー部)の外池監督はある選手から「監督は選手ひとりひとりの目を見て話さない」と指摘されたそうです。そして、自分でその指摘に納得した外池監督は選手達の前で、「これからみんなの目を見て話す」と約束したそうです。なお、これ以降の早稲田大学ア式蹴球部はチーム成績が上昇したとのことでした。

指摘した選手とそれを受容した外池監督、どちらも勇気ある判断だと思います。そして、互いに受け入れる関係性を普段から構築されていたのが素晴らしいと思います。

 関係性を築くうえで大事なのは、まず心をフラットにして選手の言いたいことを聞く姿勢を持つことです。慣れないとこころが反射的に言葉を紡いでしまうと思いますが、とにかく聞くことに集中して、「選手の心の声」を聞くようにしてください。そこから、すべては始まります。

 自分の会社員としての経験からすると、上司が自分を信頼して尊重さえしてくれれば、多少の仕事の困難さは気にせずに業務に集中できます。決裁書類はできているが、説明して反論されるのが億劫なので、机の引き出しに入れたまま、では企業活動としてはマイナスですよね。むしろ、早いうちに上司に説明をして、問題点があったら、早いうちに一緒に対処策を考える、というお互いの了解があれば、より効率的に業務は進んでいくはずです。

 そう、指導者の方と安心してコミュニケーションを取ることは、チームそしてチームパフォーマンスにとって極めて大事な事なのです。これを昨今では「心理的安全性」という言葉で表され、チームのアウトプットや効率性に大きく影響します。

 選手が指導者を信頼して本音を話せる、と思えることが大事なことです。もちろん、安全性のある関係と、なあなあの関係は異なります。そこには、指導者と選手間の適正な礼儀と節度をわきまえた関係は必要だと思います。

 選手と指導者の幸せな関係

実際に選手にとって、指導者の影響は大きいです。スポーツ経験者の方々はあのマウンドで、あのハーフタイムで、あの練習後のグラウンドで、指導者の方が話した一言を明確に覚えています。選手の本音を知り、選手に良い声かけをして、結果選手がこのチームに入って良かったと思えることが、選手ひいては指導者の方にとって幸せな関係ではないでしょうか。

 そして、私としてはチームメンバーとの関係性を真摯に考える指導者の方々の力になって、選手と指導者の方が共に前向きに活動する支援をコーチングを通じて行っていきたいと思っております。

 次回は選手間のコミュニケーションについて書いてみたいと思います。

 以上

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