スポーツメンタルコーチ、杉村康之のブログ
選手間の連携を高める

スポーツを指導する方々にとって、選手間の連携は大きな関心事だと思います。では、どこに着目すれば、「連携が取れたチーム」が実現するのでしょうか。

そこで、今回はそのチーム内の連携力を高めるため、「選手間」のコミュニケーションがどのようにしたら、向上するのか、を指導者目線で考えてみます。

 「流れを変える」という言葉があります。劣勢に立たされた時、チームが目指すポイントです。皆さんが指導するチームの「流れを変える力」はどうですか。この「流れを変える力」には選手間のコミュニケーションの有様が如実に影響します

 個々の選手がそこで求められるのは「冷静な心」で状況を把握し、その場面で最適解と思われる選択をすることです。しかし、チームスポーツで、流れを変えるためには、特定の選手のみでなく、チーム全体の意思統一が必要です。大事なのは、その後の目指すべき方向をチームで共有化することです。この共有化する能力こそが、チームの修正力の高さに影響します。まさに、「共有化力=チーム内のコミュニケーション力」が試される場面です。

 小さなグループを作る

チームがある程度の規模になるとコミュニケーションということに難しさが出てきます。そこで、コミュニケーション向上策のひとつとして、リーダー格の複数の選手のもと、チーム内を小さなグループに分けて、話し合いや日常的な清掃などの行動を一緒にとる方法があります。実践例としてはラグビーのサントリーサンゴリアスが以前から導入している「ロッカーリーダー」がその例として知られています。チーム内のグループメンバー同士のロッカーを近くに配置することからその名があります。そこにはプレーはもとより、日常生活の相談や雑談をする機会を増やし、チームのコミュニケーション力を上げる狙いがあります。

 接触回数の多さに比例して信頼感や評価が増す、というのを専門的にはザイオンス効果(単純接触効果)と言います。前記のやり方はこのザイオンス効果の視点から見ても理に適っていると言えます。

 この小さなグループの更なるメリットは二つあります。一つ目は少人数であることから、発言することに対するプレッシャーが下がり、発言機会が増えます。二つ目は各グループのリーダーに影響力のある者を配置し、リーダーミーティングを通じて、全体にチームの方針を行き渡らせやすくなります。

 近年ではこのやり方を明治大学ラグビー部で田中清憲(きよのり)監督(当時)が導入して学年横断型のグループ形成を実践し、2018年度に大学日本一を獲得しています。(ちなみに、田中監督は元サントリーサンゴリアスの選手でした)

 意思疎通の活性化とは

今まではコミュニケーションを活性化するひとつの枠組みについて述べてきました。このような枠組みを活用し、それぞれのチームの特色を踏まえ、意思疎通の活性化を図っていくこととなります。

 それでは、意思疎通の活性化とは具体的にどのような行動を改善したら良いのでしょうか。

ここで、私が思うチーム内の意思疎通活性化のため、チーム内で意識して広める行動は「①考える②発言する③聞く」だと思います。

 まず、最初にあげた「考える」に関して、興味深い事例があります。長崎県国見高校サッカー部の木藤(きふじ)監督の例です。

 国見高校と言えば、以前は選手権の常連で、多数のJリーガーを輩出したことで知られていますが、近年は低迷しておりました。そんな時、卒業生である木藤監督が就任して行った改革のひとつに「坊主頭の廃止」があります。

 国見と言えば、常勝の頃のひたすらフィジカルを追求するプレースタイルを象徴するような「坊主頭」のイメージがありました。しかし、木藤監督は坊主頭について、「強かった頃の国見」の形だけを踏襲し、選手が「考えること」をしていない象徴だと判断し、廃止を選手に提案したそうです。しかし、選手達は木藤監督の提案に反対し、坊主頭の廃止をするのに、1年半かかったそうです。根付いている組織文化を変えるには粘り強い取組みが大切となる事例です。

 この木藤監督の「考える」ことを重視した指導が実を結び、国見高校サッカー部は2021年九州高校U-17大会において、14年ぶりの優勝を勝ち取りました。

 この木藤監督の例では、指導者が俯瞰してチーム内の雰囲気(=文化)を見つめ直し、粘り強く選手と交流し、選手間で大事な行動(この場合だと「考える」)を根付かせたことが素晴らしいですね。

 次にあげた「②発言する」でも指導者の投げかけが大事なのは同様です。指導者がどのように選手に問いかけ、どう反応するか、ということが選手の発言力向上に影響します。そして、「②発言する」と「③聞く」は大きく関係します。人はきちんと「聞く」人に対してしか、本音を話しません。選手が「何を言いたいのか」「背後の事情は何なのか」を意識して、ご自身の意見は一旦脇に置いて、きちんと「聞く」ことをこころがけましょう。この「聞く」ことは意外と簡単ではありません。「聞く」うえでのポイントは選手を「受容」し、選手に「関心」を持つことです。「受容」と「関心」の心を備え持った指導者こそ、選手は求めているのではないでしょうか。

 以上のことを通じて言いたいことは、指導者及び指導陣(以下指導者等)がどう選手と接するか、がチーム内のコミュニケーション形成に大きく影響するということです。指導者が「①考える」「②発言する」「③聞く」を重視して選手と接することにより、選手もチーム内で同様の行動を取るようになります。

 結果、チーム内に文化として根付き、チーム内のコミュニケーションが向上し、結果「連携のとれたチーム」が形成されます。特に学生チームなど若年層のチームほど、指導者等の影響は顕著です。

 以上、「連携のとれたチーム」について、思うところを書きました。自分としては、メンタルコーチとして、コミュニケーションが円滑になされ、結果として個々の選手の「個性の受容」「自律性の育成」が両輪として回るチームを目指してサポートをしていきたいと思います。                                                     以上

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